トラックのマフラー盗にご用心 兵庫県北部地域で続発 (物流ウィークリー)
中国自動車道の北側となる兵庫県の中・北部エリアで、トラックのマフラーが盗まれる事件が続発している。いずれのケースも休日明けに出勤したドライバーらが点検時に発見しており、なかには4台が被害に遭った運送会社もある。排ガス浄化機能が備わったマフラーは「中古品として売買される市場があり、仮にマフラーとしては使い物にならなくても内部のレアメタルに価値が残る」(事情通)という。コロナ禍で経営悪化の懸念もあるなか、さらにダメージを広げかねない事態に関係者らは注意を呼び掛けている。
兵庫県トラック協会の本部(神戸市灘区)は4月20日、県北・但馬地域のトラック事業者がマフラーの盗難に遭ったことを傘下の各支部へ通知。知らせを受けた支部では所属する会員事業者にファクスなどで注意を促したところ、「うちも被害に遭っている」と北播磨地域の事業者が即座に反応した。
同社が盗まれたのは3月2日、いすゞの4トン車(初度登録平成29年9月)だった。会社関係者の話では「警察から当時、マフラーの盗難は初めてと聞いた」としており、これが一連の事件の発端という可能性もある。
車両保険に入っていなかったことで60万円を超える修理代は大きな出費となった。「いすゞの担当者の話では、ビスを外して配線も丁寧に切断されていたとのことだった」とプロを連想させる手口のようで、事件後は構内に設置する防犯カメラの撮影角度を意識してトラックを止めるように徹底しているという。
一方、大型連休が明けた5月8日に同じく北播磨エリアで再びマフラー盗が出没。被害に遭った会社関係者によると、「4月30日に車検から戻り、それからゴールデンウイーク。休み明けの8日に出勤してきたドライバーが、始業前点検で警告ランプの点灯に気づいて発覚した」という。盗まれたのは7トン車(日野)のマフラーだった。
「いすゞの4トンが狙われているのでは」との情報も流れるなか、同社では「うちもいすゞの4トンを止めてあったが、それより年式の古い日野のトラックから盗まれるとは…」と話しており、特定の車種がターゲットになっているわけでもないようだ。警察からは「トラックの下に潜り込んで作業した跡が残っている」との説明があったというが、盗まれたマフラーの修理代は60万円を上回った。車両保険に入っていたものの、掛け金が上がるという被害は避けられない。
兵ト協本部が警戒情報を流すきっかけとなった冒頭の但馬地域の運送会社の被害はさらに大きく、いすゞ3台と日野1台の計4台からマフラーが消えていた。いずれも4トン車。「1台は初度登録が平成23年だが、残りは5年未満のトラックばかり」と社長。うまくリビルト品が見つかったことで4台分を100万円ほどで修理できたものの、不要な出費であることに違いはない。
構内に防犯カメラを取り付けていたが「出入り口ではなく、カメラの死角になるような場所から侵入したようで、何も映っていなかった」(同)という。同社の場合も週明けの月曜日(4月20日)に出勤したドライバーらが発見しており、前々日の18日から翌19日の日曜日にかけて盗まれたと見られる。被害を受けてカメラをより高性能なものに切り替えたほか、犯人が取り外すのに時間が掛かる細工も施したという。
被害に遭った各社は事務所と車庫が同じ敷地内、もしくは隣接する格好だったが、営業所が構えられない市街化調整区域の問題もあって従来、トラック運送事業では営業所と車庫が遠く離れてしまうケースが珍しくないのが実情。それだけに防犯対策に一段と頭を痛めることになるが、同県内では10年ほど前に車両を丸ごと盗まれる事件が続いた時期もあり、関係者らは警戒感を強めている。
隣県から拡大を懸念
中国自動車道以北の兵庫県内で、運送会社の敷地に止めてあったトラックからマフラーが盗まれる事件が続発しており、隣接する岡山へ犯人が活動エリアを広げる可能性もあることから警戒を強める声が聞かれる。岡山、兵庫の両県では平成22年の後半から平ボディーやユニック車、鋼材輸送のトレーラが集中的に盗まれる事件が発生。その2年後にも同エリアで再び車両盗難が頻発しているだけに、車両の管理体制を再チェックしておきたいところだ。
ディーゼルエンジンの排ガス浄化機能を持つDPF、DPDなどのマフラーは高価だ。たまたまの感もあるが今回、兵庫で多く盗まれているのがいすゞ製の4トン車で、「うまくリビルト品(中古)が見つかればいいが、新品であればDPフィルターに40万円、キャタリストが20万円など計60万円くらいかかる。大型用になると100万円は覚悟しておく必要があるから、新型コロナで先行きに不安を抱えるなかとあっては心理的なダメージも大きい」(ディーラーの関係者)と指摘する。
対策として真っ先に思いつくのは防犯カメラの設置だが、9年前、車庫に止めていた4トンユニック車を「わずか1分半ほどの短時間で持ち出された」という運送会社の場合、敷地内に4台のカメラを据え付けていたものの、犯人を特定できるレベルの鮮明な映像は記録されておらず、当時、同社の社長は「抑止力にはなるが、カメラで盗難を食い止めることはできない。盗難届も出したが、殺人事件や銀行強盗のようなものでなければ幹線道路に設置した『Nシステム』(自動車ナンバー自動読み取り装置)で追跡するのは難しいといわれた」と話した。
トラックを丸ごと盗まれるという災難や今回のマフラー盗のほかにも、両県エリアでは「大型トラックの助手席側の足元の安全確認ガラスを割られ、ナビなど車内の備品を持っていかれた」といった被害も後を絶たない。昼夜を問わずに車両が出入りするため、人通りの少ない場所に広い土地を確保して事業を営むケースが多いトラック事業だが、それだけに防犯対策には常に頭を痛め続けているのが実情だ。(物流ウィークリー)
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