《論説》茨城県内の自動車盗多発 自衛策の強化も必要だ(茨城新聞)
茨城県内で自動車盗被害が多発している。県警が認知した被害件数は2016年から3年連続で全国最多となっており、19年も同様のペースで発生している。
被害に遭うのは高級乗用車が多く、次いで貨物自動車と続き、トラクターや建設用重機などの被害もある。県警は「ドアロックだけでは(車は)守れない」と指摘しており、愛車を守るためには自衛策を強化することも必要だ。
県内の自動車盗の認知件数は10年の2393件をピークに減少傾向にあり、18年は1491件となっている。しかし、全国的に見ると県内の自動車盗被害は突出して多く、19年も全国最悪となりそうな状況だ。
なぜ盗難被害が多いのか。県警は人口千人当たりの自動車保有台数が674台と全国2位の多さを挙げる。さらに「道路網が整備され、盗んだ車を短時間で移動できる環境にある。ヤードが多いこともある」と説明する。
地域別では県南が被害の5割強を占め、中でもつくば市や土浦市、牛久市で多い。次いで県西が2割強となっている。県警は両地域が「平地が多く、広い敷地が確保しやすいことでヤードも確保しやすい」と見ている。
ヤードは自動車を解体し、「外周の全部または一部」を塀や壁、コンテナなどで囲んだ施設で、その一部が自動車盗の温床になっているとみられる。県内のヤードの数は県警が把握しているだけでも429カ所に上る。
ヤードは高い塀などに囲まれていることから、中をうかがい知ることは難しく、一部ヤードが盗難車の解体や不正輸出の作業場になっていると見られる。
県警は昨年1月から11月までにヤードへの立ち入りを676回行い、盗品等保管などで計21人を検挙している。
ただヤードを発見しても経営者が不明や不在で、立ち入りまで時間がかかるケースが少なくない。6割弱が外国人経営で母国に帰国するなど従業員も含めて無人になっていることもあるという。
17年にはヤードの適正化を図るため、県ヤード規制条例が制定され、県警も自動車盗抑止対策係を設けて立ち入りを強化している。把握できていないヤードも少なくないと見られることから、立ち入りを強化していく方針だ。
犯行は、工具を使い、ドアやキーシリンダーを壊す手口のほか、盗難防止装置を無効にしてしまう「イモビカッター」を使った手段もある。さらに最近は、スマートキーの微弱電波を悪用する「リレーアタック」と呼ばれる新たな手口も見られる。電波遮断ケースにキーを入れるなど自衛策を講じたい。
被害車両の約9割は車内にはキーがない状態だった。このことからもドアロックだけでは盗難被害は防げず、県警はバー式ハンドルロックやチェーンロック、タイヤロックの活用や警報器、衛星利用測位システム(GPS)装置の利用も勧めている。
自動車盗の多発は、自動車社会の本県にとって由々しき問題である。県警にはヤードへの立ち入り回数を増やすとともにパトロールを強化してほしい。
自動車盗に関する情報提供報奨金制度もある。地域の一人一人が防犯意識を高めて自動車盗の犯人への目を光らせ、地域で犯行を防いでいくことも大切だ。
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