絶えない自動車盗 今年上半期も全国最多 茨城県警、被害防止へ懸命
自動車盗の多発が茨城県の懸案となっている。未遂を含め県警が把握した被害件数は昨年1491件(前年比94件増)に上り、3年連続で全国ワーストだった。今年1〜6月の上半期も721件(暫定値、前年同期比25件増)と全国最多。特に県南地域での発生が多い。県警は車の防犯診断といった啓発を行うほか、犯行の温床になりやすい解体施設「ヤード」の規制条例に基づき、監視の目を強化。工夫を凝らし、被害防止を図っている。
■多発
昨年の認知件数は1491件で今年上半期もほぼ同じペース。ピークだった2002年の2908件からは半減したものの、以前として全国ワーストの不名誉は続く。犯罪率(人口10万人当たりの認知件数)も最も高く、昨年は2番手の栃木県の約2・5倍、全国平均の約8倍に上った。
昨年被害に遭った車を種類別に見ると、乗用車が61・3%を占め最多。次いでトラックやワゴン車など貨物車が29・3%だった。今年上半期は自動車以外が増加傾向にあり、トラクターなどが9・8%の66件(前年同期比45件増)、建設用重機などが6・6%の44件(32件増)となった。
発生地域を見ると、昨年は県南が最多で821件(前年比293件増)、次いで県西が365件(同比67件増)。
今年上半期も傾向は変わらず、半数以上が県南で、市町村別ではつくば市、土浦市が多い。
■啓発
被害が県南地域に偏る要因の一つとして、警察関係者は「交通の便が良く(つくば市は)高級車も多い」と指摘する。
つくば中央署によると、住宅街が広がるつくばエクスプレス(TX)研究学園駅周辺で、6月だけで同一車種の国産高級車ばかりが9台盗まれた。最近、引っ越してきたという30代女性は「防犯グッズの購入を考えている」と、不安げに話す。
このため同署は8月、市内10カ所で車の防犯診断を行った。4日間で延べ80人の署員が、2人一組で住宅を訪問。ハンドルロックやタイヤロックの装着を呼び掛けたほか、スマートキーの微弱電波を悪用する手口「リレーアタック」を防ぐ策としてキーを空き缶に入れる手法を指導した。
県警はこのほか、車両や駐車場に関係する団体への注意喚起▽防犯カメラの設置提案▽店内アナウンスの依頼-などに取り組む。
また県自動車盗難等防止対策協議会は16年から関連犯罪に関する「情報提供報奨金制度」(最高3万円)をスタート。これまでに6件支払った。
■条例
犯行の温床にもなる「ヤード」を規制する県条例が2017年4月に施行され、2年以上がたった。認知件数は施行前の16年と比べ、17年が193件減り、18年が99件減った。県警生活安全総務課は「一定の効果はあった」とみる。
同条例は警察の立ち入りを認め、ヤードの届け出、車を引き取る際の相手の身分確認などを義務化。立ち入りは17年659回、18年670回、今年上半期316回行われ、施行から6月末までに届け出義務や相手方の確認義務違反で6件摘発。条例違反以外でも古物営業法違反や盗品等保管などで59件摘発した。
県警は6月末現在、429カ所のヤードを把握。同課は未確認のヤードや、人目に付かないヤード以外の解体場所が県内に多く存在するとみて、「県民からの情報も得ながら把握に努めたい」としている。(今井俊太郎、吉原宗康)
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