メーカーが莫大な予算を割いて対策しても車両盗難が減らないワケ(CARVIEW)
クレーンなどで物理的に車両の盗難が行われる
車両盗難は世界的な大問題である。その昔は、ドアの窓枠に針金をつっこんでドアロックを開け、キーシリンダーの配線をわざとショートさせることでエンジンを始動する、といった手口でクルマが盗まれた。
その後、イモビライザーの登場で車両盗難は一気に減少した。また、仮に盗難されてしまっても、車載器のGPS受信機能を使って車両位置を特定するなどさまざまな対策が行われてきた。
それにもかかわらず、車両盗難が未だに世界各国で発生しているのが実情だ。もっとも簡単な車両の盗難方法は、レッカー車で引っ張ったり、または大型クレーンを使って大型トラックや大型トレーラーに積み入れてしまう手口だ。そして、盗難グループのアジトで、じっくりと車両盗難防止装置を解除する。その場合、アジトの場所を知られてしまう可能性もあるため、とっとと船積みして東南アジア、ロシア、中東などに持って行ってから荒手の方法でカギを開けるといったことが考えられる。
コネクテッドカーの普及でハッカーによる乗っ取りが新たな問題に
そして最近問題になっているのが、ハッカーによる車両の乗っ取りである。2010年代に入り、車両と外部が通信でつながりさまざまなサービスを受けるコネクテッドカーの開発が進んでいる。そのなかでもっとも注目されるのが、2014年から量産が始まった、Apple CarPlay、またGoogleのAndroid Autoというスマホと車載器の連携システムだ。
逆の見方をすると、コネクテッドカーは車載器やスマホを通じて、車外に対して情報の出入り口を開いてしまったことになる。ここに目をつけたのが、ハッカーである。走行中の車両の車載器に対して外部から妨害情報を流すなどして、ハンドルやエンジンコントロールを行う制御システムのデータを改ざんし、車両をラジコンのように遠隔操作してしまう事件が多発した。
こうしたハッカーは、ホワイトハッカーを自称する場合が多い。ホワイトハッカーのホワイトとは、正義の味方といった意味合いだ。つまり、自動車メーカーに対して「こんなていどの技術ではすぐにハッキングされてしまうので、早急に対応策を考えてくれ」と警告するというものだ。
そして、自動車メーカーがハッキング対策を施すと、そのシステムに対して再びハッカーたちがアタックしてくる。ハッカーにとってはハッキングするハードルが高くなれば高くなるほど、ハッカー魂に火がつくのだ。こうして、メーカーとハッカーとのいたちごっこが続くのである。
今後、本格的な自動運転時代が到来した場合、車両盗難はそのまま誘拐に結びついてしまう恐れもある。なんとも大変な時代になったものだ。(カービュー)
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